2016年6月10日【 ecec on sns 】
部活動先輩後輩の法則というものを聞いたことがあります。運動部の中には厳しい練習を課す所もあると思います。先輩から罵倒されたり、無茶な練習でしごかれたり、不条理な上下関係を強いられたりします。後輩への愛情で厳しい練習を乗り越えさせるだけならまだしも、不条理な上下関係を強いるのは愛情とは言えません。そんな恐い先輩がやっと卒業して代が変わったにも関わらず、その後輩は自分がされて嫌だった練習や上下関係を同じ様に後輩にさせてしまうです。その理由はこうです。自分が経験した厳しいシゴキによって今の自分が立派に存在しているのだと思ってしまうのです。先輩のおかげで今の自分があると先輩のやりようを美化してしまうのです。辛い過去を正当化することで傷ついた自分の心を癒そうとするのです。そして後輩をしいたげる文化が受け継がれてしまうというのがこの法則です。厳しい試練を与えなければ人は育たないというメンタリティーはこの法則に近いものがあると思います。
ご自身の人生を振り返って、困難な状況に陥ったり、壁にぶち当たったり、挫折したりした時あなたはどうやってそれを乗り越えましたか。あの厳しい先輩の顔を思い出しましたか。それとも辛い気持ちに共感し、自分を信じて励ましてくれた人のことを思い出しましたか。きっと後者だと思うのです。
人は誰かに厳しくされた経験を拠り所にして生きるのではなく、誰かに優しくされた経験を拠り所にして生きています。スパルタな指導、罵倒されながらの訓練を乗り越えたことが自信になるのではなく、自分の良心を信じてくれたこと、自分の努力を認めてくれたことを勇気に変えて生きていきます。もっといえば、誰かに愛された温もりや通じ合った喜びが前に進む力を与えてくれます。子どもが悲しい気分になるような状況を作るのではなく、幸せに感じる状況を積み重ねることが保育だと思います。さくらしんまち保育園では運動面でも音楽面でも文字や数でも、集団行動面でも、食事面でも訓練を押し付けることは避けています。仮に訓練と同じ内容だとしても、遊びの中で楽しく取り組めないかと考えます。柔軟に考えれば意外と遊びに転換できるものです。遊びや関わりの中で待つことや我慢すること、集団行動を学ぶことが理想です。
願わくば子ども達の心の中に楽しい経験や仲良しの友達、自分を信じてくれた大好きな先生のことを一杯詰め込んで卒園して欲しいと思っています。それが小学校やその先の人生でつまづいた時に力を与えてくれると思うからです。例え愛のムチだとしても、幼少期の暗く辛い思い出は将来を照らしてはくれません。
以上